英国初の両手移植患者、術後わずか8か月で手紙を書けるまでに回復
イギリスで昨年、両手の移植手術を受けた患者の回復が目覚ましい。移植後数週間でものを掴むことが出来るようになり、現在では手紙を書けるまで回復したという。
金属プレス機で両手を失った患者
その患者は、イギリスに住むクリス・キング(Chris King)57歳。彼は4年前、誤って金属プレス機に手を入れてしまい、親指を残して両手の手の平の大部分を失ってしまった。
事故によって、人生のどん底にいたクリス。しかし去年転機が訪れる。そう、両手の移植手術を受けることとなったのだ。
こちらは事故後のクリスの両手。
腎臓や肝臓の移植は現在では、そう珍しいものではなくなった。しかし手の移植となるとそうはいかない。
進化の過程において、他の動物とは比べ物にならないほど、繊細な動作を行うことが出来る人間の手だ。血管はもちろんのこと細かい神経まで、正確に接続しなければ動かすことはできない。そんな難しい手術だからこそ、事故で欠損することが多い部分であるにもかかわらず、これまで移植というのは行われてこなかった。また、ドナーを見つけにくいという問題もある。
そんな手の移植手術を幸運にもクリスは受けることが出来たのだ。
両手の移植後、目覚ましい回復を見せる
クリスの移植手術を行ったのは、外科医のシモン・ケイ(Simon Kay)と8人の医師からなる医療チーム。シモン医師は2012年にイギリス初の手の移植手術を行った人物で、クリスの両手移植手術もイギリス初の事例となった。
手術が行われたのは去年の7月のこと。12時間にわたる手術は無事に成功したものの、移植された手が動くかどうかは、術後の経過やリハビリをしてみなければ分からない。
移植を受けたクリスはというと、術後数週間後にはビール瓶を掴んでグラスに注ぎ、ビールをグラスから飲むことが出来るようになったという。そして、現在ではなんとペンを手に持って手紙を書くことが出来るまでに回復したというのだ。
クリスの回復について手術を執刀したシモン医師は「クリスから自筆の手紙を貰ったときは驚きました。」「来月には靴ひもを結び、シャツのボタンをとめられるようになることを目指しているので、クリスの術後の経過具合は非常に満足のいくものです。」と語っている。
クリス本人も新しい手について「私は握手することが出来ます。ペンだって持てます。完璧に元通りとはいきませんが、多かれ少なかれ、以前と同じ動作を出来るようになってきました。」と語る。
近年は義手の発達も目を見張るものがあるが、将来的には手の移植という手段も当たり前の選択肢になるかもしれない。
via:dailymail(英語)