ハチが遺伝子組み換え技術を!? 寄生蜂は蝶の幼虫に自分のDNAを組み込む!
今月17日、科学誌の「PLOSジェネティクス」に驚くべき研究論文が掲載された。
スペインのバレンシア大学の遺伝学者ライラ・ガスミ(Laila Gasmi)、サルバドール・エレーロ(Salvador Herroro)らが発表したもので、なんとハチが他の生物の遺伝子組み換えをおこなうことができるというのだ。
遺伝子組み換え技術とは、他の動物のDNAを別の種類の動物のDNA配列に組み込んで、異なる種類の能力を持った生物をつくるというもの。身近なものでは、虫に食べられやすい農作物に、虫に強い植物の遺伝子を組み込んだ遺伝子組み換え作物などが有名だ。
高度な文明社会を築いた人間ですら、ここ数十年で手に入れた最新技術である。それを、一部のハチはおこなうことができるというのである。
研究に使われたハチは、寄生蜂の一種アオムシサムライコマユバチ。このハチは、自分の卵をチョウやガの幼虫に産み付けるのである。その時同時に、ハチは寄生主であるチョウの幼虫の体内に自己免疫機能を無力化させてしまうウイルスを注入しているのだが、そのウィルスにはハチのDNAが含まれている。
こうして免疫機能を失った幼虫の体内で、ハチの卵が孵化、ハチの幼虫はチョウの免疫機能に邪魔されることなくチョウの幼虫の体内で成長。そして最終的にチョウの幼虫を食い破って成虫へとなるのだ。
だが、この場合だと、ハチのDNAを組み込まれたチョウの幼虫は、ハチが成長すると同時に死んでしまうことになる。
しかし、どんなことにも例外は存在する。研究論文によると、まれにハチが間違えて寄生主であるチョウとは違う種類のチョウの幼虫に卵を産むことがあるのだそう。そのような場合、卵を産み付けられたチョウの幼虫は、ハチの幼虫に食べられることなく、成虫となり子孫を残すことができるのだ。
このチョウの成虫は、幼虫の時にハチのDNAを組み込まれているので、交尾をして卵を産むと、その情報が子孫へと引き継がれることになる。こうして、ハチのDNAを持ったチョウが生まれるのである。
研究者は、こうして誕生したと思われるハチのDNAを持つチョウを複数匹発見したという。
また、このハチによる遺伝子の組み換えは、チョウにとってもメリットがある可能性があるというのだ。通常、ハチのDNAを組み込まれたチョウが運よく子孫を残すことができたとしても、チョウの体に有害なものであれば、自然淘汰によって弱いチョウは子孫を残すことができないので、いずれ失われてしまう。それが失われずにハチのDNAを持ったチョウが残っているということは、何らかのメリットがあるはずだと考えたのである。
研究の結果、ある事実が判明する。
バキュロウイルスというチョウの幼虫が感染するウィルスから、幼虫を守るタンパク質をハチ由来のDNAが製造することが分かったのである。つまり、寄生蜂から卵を産み付けられたにもかかわらず、生き延びたチョウの子孫は、通常の個体よりもウィルスに耐性を持つことができるのである。
まだ、詳しい解明には至っていないとのことだが、もしハチにそこまでの能力があるのだとすれば、進化論で説明はつくのだろうか。一部のネットユーザーは、昆虫が太古の昔に宇宙からやってきたエイリアンだと言うものがいる。もしかすると本当にそうなのかもしれない。