地球を再現した密閉空間で人間が100年生活する実験? バイオスフィア2とは
「バイオスフィア2(Biosphere2)」という実験をご存じだろうか?
バイオスフィア2とは、上部は鉄とガラス、建物のそこも鉄でふさがれた、空気も通さない完全な密閉構造の施設である。
地球をバイオスフィア1として、「人工的につくった地球」であるこの施設をバイオスフィア2と呼んだのだ。
アメリカのアリゾナ州の砂漠にその施設は作られた。
最大高さ28メートル、広さ約3エーカー(約3700坪)の巨大な施設内には、人工的な熱帯雨林や湿地帯、サバンナ、水深8メートルある海がサンゴ礁や魚まで入れられた。さらに、人間が生活するための畑や家畜も入れられた。
約3800種の植物と250種の生物が生息する、まさにミニ地球だった。
そして、この地球を再現したバイオスフィア2で、人間は100年間生活できるのかという、驚くべき実験が実際におこなわれたのである。
実験は、1991年9月26日に始められ、男女4人づつ合計8人がバイオスフィア2での生活を開始した。
食料だけでなく水や酸素まで全て自給自足を強いられるのである。
実験に参加したジェーン・ポインター(Jane Poynter)が2009年に南カリフォルニア大学で講義した際の映像がこちらである。
動画:TEDより『ジェーン・ポインター、バイオスフィア2での生活』(字幕付き)
こちらがバイオスフィアで生活していたジェーン・ポインター
結果はというと、慢性的な酸素不足により、2年間で実験は幕を閉じることになってしまった。
理論上、地球と同じ環境を再現すれば、植物が酸素を作る→動物(人間含む)が酸素を吸い炭素を排出→植物は再び炭素を吸収し酸素を作る。というように、地球と同じように循環するはずであった。
しかし酸素濃度は、21%から14.2%にまで低下し、生活する科学者たちは低酸素により、活動的に動くことはおろか、簡単な足し算までできなくなってしまったのである。
調査の結果、大量の二酸化炭素が、コンクリートに吸収されていたことが判明した。その結果二酸化炭素を必要とする植物がうまく生育出来ず、酸素濃度が低下してしまったのだった。
実験の終盤では、酸素濃度の低下などを原因として、作物の不作や家畜の死によって食料不足も深刻だったという。
実験自体はわずか2年で終了してしまったものの、この実験は火星移住や宇宙空間での生活などの研究で、バイオスフィア2の実験は生かされているという。
参照:TED、biosphericdesign(英語)